仕様
オシレーター | 周波数 | 23.8-24.2GHz |
出力 | 1μW-16mW 可変 | |
磁石 | 磁場可変範囲 | 100-1000mT |
冷却方式 | 冷水循環装置 | |
共振器を用いた検出方式 | 常温時:TE011 冷却時:TE111 |
試料の形状、性質および温度によって選択できること |
その他の検出方式 | 試料にRF波を照射して、電流検出ESR(EDMR)がLHe下でできること | |
磁場変調 | 100kHz, 0.1μT-5mT | |
試料の冷却 | 液体ヘリウム温度定点 |
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検出感度 | 常温:1010スピン以下 LHe冷却時:109スピン以下 *EDMRの場合 常温:106スピン以下 LHe冷却時:104スピン以下 |
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コンピュータ | Windows |
測定例 |
構成 |
C60のラジカル検出例
図1 CAChe:MM3で求めたN@C60の構造
C60の殻の中に窒素原子1個が入り、電子スピン状態S=3/2を示す。 T1、T2が非常に長く、量子コンピュータの記憶素子として有望視されている。T1は室温で100 μsで5度Kでは数秒もある。グロー放電で作成されるが収率が悪く現在C60の0.01%程度。そのために、他の物性データはまだない。
図2 MOPAC UHF AM法でS=3/2状態のスピン密度分布を計算してみた。窒素原子を含む面でカットしてみると窒素上に密度の濃い、あたかもd軌道のよな分布が見られる。これが3本線の分裂をもたらすスピン密度分布なのである。しかし、自由原子のそれに比べると1/3~1/4しかない。要するに2/3以上がC60の骨格上に分布していることになる。
中央の窒素原子の替わりに燐原子が入ったP@C60、またC60に替えてC70を用いたN@C70、なども単離されており、N@C60と同程度のT1が求められている。従って、極低温ではあるがQ-ビットとして有望な素子が現れたと考えてよいであろう。国内でも最近収率を上げる試みがなされ始めた。
C60は1980年代の半ばに煤の中から見つかった。はじめは学者の興味本位で始められた研究が最近ではビタミンC60という名の化粧品が出現するまでになっている。当化合物N@C60はどうも新側面を示しているようである。S=3/2をもつ窒素原子が室温でも安定に存在し、お互いに磁気相互作用をするということは驚異である。電子スピン共鳴(ESR)という物理現象を使ってアップスピンをダウンにして情報を記憶させることは究極の量子ビット(図3)なのである。
図3 量子ビットに情報をESRを用いて書き込んだところ。極低温ではあるが、1秒以上、この状態が持続(メモリーの保持)する。
ESRの出番である。